発病―桜の頃―
中学二年生の春休みだった。
これまですごく居心地の良くて楽しかった部活が、楽しくなく
なってしまったのだ。友達関係のトラブルがあったことも
あり、私は友達に悪口を言われている気がした。
唯一の楽しみの場所を私は失ってしまった。そしてものすご
い不安感が私を襲った。どうしたらいいのかわからなかった。
私は、「きっと高校受験への不安なんだろう」と思っていた。
しかし今思えば、それは単なる受験の不安なんかではなく、
発病のサインだったのだ。自分ではどうしようもないくらい
の不安感だった。春休みがあけ、新学期が始まった。
物凄く不安で仕方がない。私がどこかに行ってしまいそう
で怖くて仕方がない。不安で不安で、教室で私は泣いてい
た。先生もみんなも、「どうしたの」とか「悩みがあったら聞く
よ」などと心配してくれた。しかし、何故不安なのかがわから
ない。言葉にできない。だからどうでもいいようなことをこじ
つけて、それを「悩み」だと言って自分にも周りの人にも
言い聞かせていた。授業も、全然わからなくなった。
教科書が、理解できないのだ。今までなら読めばわかった
ものが、全く理解できない。当てられても答えられない。
ずっと「優秀」な自分に誇りを持っていたから、ショックだっ
た。勉強を「することができない」という状態に、困惑した。
そして教室がざわざわしてうるさくて、先生の話が理解
できなかった。私の悪口をあちこちでコソコソと言ってい
るのだと思っていた。成績がいいことで嫌味を言われて
いる、というようなものだった。
忘れもしない修学旅行。前日、私は教室で泣いていた。
友達も心配してくれた。そんな不安定な状態で私は
京都・奈良へ行った。新緑の季節なのに、私の前に映る
光景は、怖くて暗い世界。当時の写真を見ると、無理や
り微笑んでいる自分が写っていて、悲しくなってしまう。
自分がこんな状態になっていることを先生にも相談した
けれど、思春期の不安定さ、ということにされた。
仕方がない。先生だって医者じゃないし、それは責められ
ないことだ。先生は先生なりに、私の相談に乗ってくれた
り、頑張っていたのだと思う。先生とのノートのやりとり
は、今でも残っている。私は私なりに、このおかしな状態
を伝えようと頑張っていた。しかし、私がおかしくなった
「原因」としたものは、原因でなく、ただのこじつけだった。
統合失調症の発病だった。
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